気功(または武術)を実践する場合、全身全霊で“その動き”に「集中」することは、重要なことです。よく気功教室で行う“イメージ”の訓練は、とても大事です。「禅」の練習も同様であり、その心の持ち方としては、何に「集中」すべきか!?ということを理解した上で実践しなければなりません。これが分かるようになれば、とても日常生活においても役に立ち、人間関係も良くなります。そして、それは効果としてもすぐに表れます。ですから“悟り”とまではいかなくても、己の心の乱れを静めて集中力を高めていくことが出来ますし、すぐ実践として使えますし、良い結果が出るのです。
 もし、仕事を行っている人であれば、その仕事の相手に意識を集中させることです。それは単に上司の言ったことをしていけば良いということではありません。その相手の立場になって、「心から行動に表わすこと」が重要です。そのように集中して接することが出来ましたら(上司が何か言った時、心から聞く態度を持っていれば)、上司からの指示などを間違って聞くというようなことは無くなりますし、任されて実行に移した時にどのようにすれば良いのか理解できるのです。たとえば会社の代表として、取引相手の所に書類を届けるとか、または打ち合せなどを行う場合、取引相手(代表など)の気を感じ取りながら、相手の立場で考えて実行すれば、失敗するようなことはありません。さらに何度もやりとりをするようなことはないでしょう。

 また私たちが気功の練習をする上でのポイントは、子育てと似ています。たとえば食事中に子供の悪い癖を正すような場合、相手(子供)の立場になって、理解して話すことが大事です。そのように接すれば、子供も分かってくれるのです。けれども子供に対し、大人と接しているかのように(まるで相手が大人であるかのように)、一方的に話を進めたり接したりしてしまっては、意志疎通ができず、分かってもらえないことでしょう。あるいは子供の言語や行動に注意し、よく観察すべきであり、どこに問題があるのか(相手の立場になって考察して)理解出来れば、すぐに解決していくことでしょう。
 
 ある人が少林寺気功(または武術)を習う時、どれだけ少林寺に関する歴史的背景や観点について、また伝統的な文化や思想などの理解、さらに今日まで続く主旨など、どこまで把握しているのか・・・!?せっかく少林寺気功や武術の練習をしていても、単に運動の一環として実践しているだけであったり、「ああ、気持ちよかった!」で終わってはなりません。

 気功(または武術)を習う時、または仕事をする場合も、人との関わりの中で進めることになるでしょう。仮に自分が相手に何か伝えるといった時、どんな話し方をすればよいか、内容をどのように伝えるか、逆にどんなことを言ってはいけないかなど、本来は分かるはずなのに、多くの人は違うのです。人によっては、おしゃべりが得意であったり、自分のことばかり主張していたり、あまり内容のないことばかり話していたり・・・なのです。しかし何かあった時には、その関わりから遠ざかるようにしたり、関係のないようなそぶりをしたり、避けたり、距離をおいたり・・・といった問題のある方が実は多いのです。中には、言うことは言うけれども行動が伴わず、実際には10分の1ほどしか発揮しない人もいます。また伝える側の気持ちだけを相手に伝えても、受ける側にはその思いが伝わっていなかったとか、興味を抱いていないといったケースもあるので、しっかり状況を察しながら行動に移す必要もあります。相手は今、何を求めているのか、聞きたいのか、してもらいたいのか、そして自分は何を伝えなければならないのか・・・見極めることが大事です。
 ですから、自分がしゃべることに夢中になるよりも、まず相手の話を聞くというのが基本です。所々で相づちしたり、ポイントのところで的確な話(アドバイスなど)を行うことが大事なのです。またそれは子供との関係でも、よく相手を観察して接することが大事です。子供を持つ親であれば、特に子供の目線になることも必要だと理解し、意識して接するようにいたします。おのずと子供にとって、何が必要なのか分かるはずです。
さらに身近な人に対しても、同様に理解して対応ができれば、上手に関係を築くことができるのです。こういうことは、決して特殊能力などを必要とするものではありません。しかし意外にも多くの方は、あまり考えず生きているため、失敗する人も多いのです。そして(失敗した)本人は、なぜそうなってしまったのか、分かっていないのです。さらに自分の過ちであることを認めないのです。そうなると、どんどん悪循環になってしまい、その人の人生に支障が出るのです。それはあまり上手な生き方とは言えません。心身も弱り、いずれ病気になってしまうことでしょう。少林寺気功や武術教室で受講していても、また仕事をしていても思うように出来なくなってしまいます。
 心の視点をどこにするのか?集中すべきところはどこか?と意識することが大事です。これからは自己中心的に話を進めたり聞いたりするのではなく、自分から積極的に相手のことに集中して接し、仕事の時でも自分の心は脇に置いて、まず自分と相手を一つさせる(気を一つにする)ということがとても重要なのです。心から接することができれば、効率も効果も上がり、さらに質的にも良いものになっていくのです。