日本において、いわゆる少林寺気功と言うのは、本協会が指導する気功を差します。実は少林寺内でも気功は少なく、少林寺周辺の武術学校で教えている気功も硬気功がほとんどです。また一般に気功というと易筋経や洗随経のことですが、どちらかというと禅の修行僧の運動方法と言えます。

1500年の歴史がある少林寺の中の秘法として、「気」を鍛えることや人間のエネルギーを高めるために鍛える方法、さらに気功医療の観点からアプローチできる気功を学ぶことができるのは、本協会のみです。

少林寺でお坊さんの医療とは、整骨、鍼灸、漢方、またはマッサージなどの手法で行います。しかし相手に触れずに行う気の力(外気)による治療方法を学べるのも当協会のみなのです。この外気の方法による治療はとても便利ですが、大変難しいものです。

私は当初、日本において、指導員を育てるのにこの少林寺秘伝の気功を体系化して、指導員コースをつくり、スタートさせるまで大変苦労したものでした。

日本で教えるのは、元々、気功の“基礎”だけと考えていました。

最初の生徒が基礎を2年間受講後、卒業しても練習をしっかり行い、レベルを上げましたが、実は少しもったいないと感じました。当時、お知り合いになった有名なN先生(現在も中国で活躍中)は、1,000人位を集めてイベントの主催をして、ご自分の生徒もたくさんいました。その方が交通事故に合い、重症により、大変な思いをしました。その後、後遺症も残り、ご不自由なさいました。多くの気功師から治療を受けていました。私はその頃、日本で指導をすでに始めた時期ですが、N先生も私の患者となり、とても回復されました。彼は頑固者で、いろいろ治療を試みだのそうですが、治らなかったようです。しかし私のところでは、継続して治療を受け、良くなっていきました。

その方が気功の基礎コースを終了した時、実際に少林寺気功(鶴功三十六式)を演武してみせました。彼はそれを見て、どうしても習いたいと言い出しました。しかし少林寺から鶴功三十六式の指導許可をもらっていませんから、勝手に指導する訳にはいきません。仕方がなく断ると、彼は大手旅行会社に依頼し、ご自分の生徒たちのグループを連れて、嵩山少林寺に行ったのでした。行く直前にその旨、私に電話してきました。私は実に驚きました。また、しばらくして帰って来たと報告があり、私と会いたいと言ってきました。そして会った時、どんなことを学んできたのかと訪ねてみましたら、気功を学んだと言いました。しかし気功と言っても、站椿功、またそれも武術の站椿功のようでした。さらにどこで学んできたのかと聞くと、実は少林寺ではなく、その周辺の武術学校だと分かりました。さらに旅行の料金について聞きますと、少林寺への旅一週間で40万円を超えたというのです。本協会で毎年少林寺に認定旅行をしていますが、その2倍以上なので、これには本当にびっくりしました。

ただ本人の熱意は非常に伝わってきました。そのため、このことを嵩山少林寺の管長に話をしました。少林寺の素晴らしさを全世界のものとしてもいいと私は感じていました。当時は管長も若く、物事を柔軟に対応されるお方で、また国際的な発想をお持ちでした。私からの話を、興味を持って聞いてくださり、話はどんどん進みました。そして指導員養成コースが始まりました。このように最初から、こちら(私)から気功師のコースを始めていったというよりは、第一期生や第二期生の先輩の方々、そしてN先生の熱意により、私と管長は感動して、O.K.を頂き、今日のスタイルに至っているのです。

その後、認定旅行をすることになったのも、当時の皆さんからの要望があったからなのです。元々は認定証を発行するということはありませんでした。当時は今のような内容とは違い、考えられないものでした。習ったらそれで終わりでした。しかし2期生が卒業して、嵩山少林寺に実際に行ってみたいということになりました。

あまり私は旅行について詳しくはありません。また人をお世話するのも得意ではありません。それでも卒業した皆さんの要望が強く、その願いを叶えてあげたいと思い、管長に話してみました。結果、管長から快く「是非来なさい!」と言って頂きました。すると、皆さんからせっかくなので卒業した「証」を頂きたいということになりました。しかもそれを管長自ら手渡しで頂きたい、と申し出されました。さすがにこれには私自身、まるでカミナリに打たれたような状態でした。過去の少林寺の歴史から、外部の者にそういう証明書を出したことはありません。このことについても皆さんの熱意が感じられて、私は管長に話してみました。返事は発行しても良いと判断されて、okを頂けたのです。こういう管長の良心的な配慮の経緯があり、以降、認定旅行を毎年行い、直々に管長より認定証の授与をして頂いているのです。(今の会員の方々は)当時の先輩方に感謝しなければなりません。私自身は、このような発想を元々していませんでした。日本の社会環境においては、“証”が必要だと感じました。時代とともに状況も変わり、今に至っているのです。

 

実はこの気功師(指導員養成)コースは、海外(アメリカやヨーロッパ)でも人気があり、以前から各地で教えて欲しいという要望があります。でも私の体は一つしかありませんから、今後も日本で活動していくと決めました。ですから、ここ(当協会)が中心で進出を考えています。昨年はアメリカ・サンフランシスコにおいて、指導して参りましたが、活動の基盤は日本にしています。ある方から、秦先生は性格的にアメリカやヨーロッパのほうが向いていると言われたことがあります。特にアメリカはスケールや迫力が違います。しかし長年、ここ日本で指導してきて、たくさんの指導員がいる中、裏切りがあってはなりません。もし私が海外に行ってしまったら、こちらはどうしますか?と言われますし、皆さんは困惑されてしまうことでしょう。

これまで、多くの指導員の方々に楽しんで頂き、効果を感じてもらい、それぞれの人生に役立つものとして、各自、結果を出してきました。

是非皆さん、この2月と3月に気功師コースの説明会を予定していますので、どうぞお越しください。