「四段功」は、全日本少林寺気功協会で教える少林寺気功の一つです。少林寺気功による肉体及び精神の準備体操のようなものです。少林寺秘伝72芸のうち第11芸(練功法)の一つであり、気功法の基礎とも言うべき四法です。その四段功は72芸のうち、唯一の型のもので全身を動かす運動気功になります。身体に対し、全身に「気」を充満させて元氣になり、全身に気が巡り、満たされるので病気をしない体になります。
この練習の時、意識と心の持ち方としては自分の動作と呼吸を合わせ、さらにイメージを強く持ち、「集中」していきます。他のことを考えたり、思い起こしたりせず、今の自分自身に集中するのです。たとえば食事をしている、または歩いているなどの状態の時から比べれば、四段功を実践している最中はとても高いレベルの意識で行っている状態になります。

 私たちが行う少林寺気功の四段功の練習は、メンタル面にどのように効果を与えるか?またマインドフィルネスさせるのか?皆さんに分かるように説明いたします。
 「四段功」の基本的な要素は、一つ目は練習のポーズや動作であり、二つ目はその時の呼吸、三つ目はイメージ力(集中力の結集)であります。
 
 第一段は「通天採気」と言います。最初に両手を両脇から上げていき、両手を組み合わせて、手のひらを返し、上に向けます。両手が上へ伸ばす時に吸い、下へ来たときに吐きます。全身が伸び、天(宇宙全体)から良質な気を採り入れるようにポーズをしていきます。この状態の意識は、“呼吸”と“動作”に持って行きます。呼吸は体の動きに合わせることが大事です。さらに宇宙のパワーのエネルギーを天から百会(頭の天辺のツボ)や労宮(手のひらのツボ)から入るのです。体に入り、下へ来ると呼吸は吐くほうに変わります。吐きながら体の下を通り、(イメージをして)病気や邪気などの悪い気を湧泉(足の裏のツボ)から地へ放出していきます。四段功の第一段の動作では、こういうイメージをして行っていきます。このように意識をすることを訓練しながら、実践していけば意識と動作は高いレベル(より統一した状態)になります。動作とイメージを合わせて意識すること、そして呼吸は、深く吸う・深く吐くように行います。そうすれば、その時の実践者の心はイメージ力が高くなり、はっきりとし、とても集中しています。この“集中”の状態は、単に手が動いているとか、脚が動いているといった部分的な動きのいうことではなく、手や脚の動きの流れが「イメージ」と「呼吸」、さらに「動作」を一致させ、気が流れるといった深い部分まで集中しているのです。そのため、この場合の集中とは、深いレベルまで意識が集中している状態になります。
 人間の行動自体と行動の延長線、あるいは行動の始まりの前(準備段階のようなもの)にも、気を抜かず集中して意識すること。また全体的な行動のイメージと効果の延長線にあり、全部一緒になり、最終的には自然になります。こうなると、動く時に全身の筋肉や内蔵など、すべての細胞は呼吸します。そして自立神経系(交感神経や副交感神経)も働きます。意識としては、宇宙の気を頭の上から体内に採り入れて、下方へ下げていきます。
 イメージする意識と体の動作は一緒になるようにいたします。実践では一致させて動かしています。集中して行うことにより、身体にも作用いたします。
これを「心身統一」、あるいは「全身全霊」と呼ぶことができることでしょう。

このように「四段功」を実践していけば、簡単にマインドフルネスさせることができます。しかし普段の生活の一面(食べる、歩くなど)を取り上げてみても、それは集中しているとは言えません。私たちは常に「集中」を意識して日常生活を過ごしているわけではありません。大抵は食べながら別のことを考えていたり、また歩いていても脳(心)は何か違うことを浮かべていたりしているでしょう。
 「四段功」の練習の時、全身の筋肉、そして関節を伸ばしていきながら、体中の内面と外面の全神経と意識(表面意識や潜在意識など)、さらに外部の筋肉や内部の内蔵(五臓六腑)をすべて連動させている(一致させている)という状態が“最高の集中”をしていると言えるのです。
 全身の筋肉を伸ばすため、また全身の関節を伸ばすための必要な筋肉と伸びる共同性はあります。次は腰を曲げて頭を下げていき、両手も指を組み合わせたまま、上下に肘を曲げながら伸縮させます。さらに上半身を回していきます。全身の角度を変えながら、まんべんなく動かしていきますが、大事なことは「集中」、そして「イメージ」をして、さらに「呼吸」に伴って「動作」をしていきながら行うことです。

 第二段は「陰陽回転」です。第二段になると体を左右に捻るという動作が加わります。まず吸いながら、左側に曲げていき、両目は左から右の踵を見るようにいたしますが、簡単な動作をしながら(手首や足首も柔軟に動かし)、全身の関節を捻じるというのが特徴です。これは第一段の動作とは違った特徴であり、全身の筋肉にも刺激を与え、その動作と呼吸を合わせるようにいたします。そのため、第一段とは異なる集中になります。左に捻った時、息を吸い、(良い)気が入り、右に捻った時、息を吐き、(悪い)気が出ていくイメージを同時に意識しながら行います。「意識(イメージ)」、「呼吸」、そして「動作」は一緒にぴったりと一致させていくことが大事であります。

 第三段は「左右沖拳」です。この動作はとても武術的な動きであり、少し難しくなります。まず左側から「弓歩」の姿勢から真ん中へ、さらに回転し右側の「弓歩」に変わります。同時に左の時の防御の姿勢から、右の攻撃の姿勢になります。ですから脳は、左脳と右脳、そして左足と右足の間のつながりにより完成になります。このように脳と身体のリンケージをはかる動作に集中しながら、同時に呼吸は、守る時に息を吸い、拳を出して攻める時に息を吐くといった左右違った動作と呼吸を変えて行うのです。両手と両足が同時に動きますから、第一や二段よりも複雑であります。しかし、とても集中して行うようになりますので、「集中力」が高まります。集中していくことによって、自分の存在の表現がはっきりしていきます。自分自身に意識をすることができますので、集中のレベルがより高まります。この練習を重ねていくと、さらに集中度を上げていくことができるので、心身に対しての良い効果を与えるのです。

 第四段は「馬歩虎掌」です。腰を落とした「馬歩」から「站椿功」の姿勢になり、呼吸をしながら腕には力を入れず指先だけに意念を集中させて伸ばしたり、物を掴むように曲げたりさせていきます。その時、気を出したり入れたりと呼吸に合わせながら、気のコントロールをします。上虚下実の状態で下丹田に気を集め、満たしていくのです。(武術も同様ですが)基本的姿勢であります「馬歩」の型で、指先まで集中して行うことにより、全身の血流が良くなりつつも脳が活性化され、気が指先まで流れていき、体の隅々まで満たしていくことができるのです。そうなれば「心」と「体」が一つになるのです。

 「四段功」の第一段と第二段は、準備運動のような動作です。誰(老若男女)でも、特別な訓練をしなくても見て真似て、すぐにできます。このように簡単にできる動作や型ですから、意識することもしやすいのです。そのため、行っている動作(その動きの延長線上)に意識させて、呼吸は陰陽のバランスに合わせて行います。しかし見て簡単そうな動作に思えますが、(これまで述べました通り)実は内面と外面のそれぞれの動きは、外面の筋肉のみの動きではなく、内面の内蔵まで刺激を与えていくよう一緒に動きます。
 さらに心身ともに鍛える動作でありながら、基本的良性なイメージの基に行いますので、体にとっても、この「プラスのイメージ」がいいのです。
 一人ひとり練習をしながら「意識」して行っていきますが、集中していき、集中状態になりますと、体内の気が、今集中している部分に集まってきます。特に集中力を高めていきますと、集まってくる気が強いものになるという特徴があります。また体を動かすことによって、血行の循環が良くなります。さらに意識的に動作と呼吸をあわせますので、気も流れます。気血はともによく流れるようになります。体の動きもスムーズになり、筋肉など動かしやすくなりますから、自然と力を入れたり抜いたりができるようになります。見た目では簡単そうに見えますが、これらの動作等を一致させることによって、本来の健康な状態になることができ、秘めた人間のパワーがつくようになります。そして心のコントロールの能力が高まります。この継続が集中力を高めていき、「集中の状態」で“天”の気を受け取る、また病気や邪気を出していけるのです。

 自分の意識と体は一つになれば、脳(心)でも良い状態が続くことになり、余計(雑)なものが入ってこないのです。気功の練習では、自分の欲望などの雑なことはイメージも考えず、良性的且つプラスなことを気持ちよくイメージしながら行っていきますから、心が自然とそういう方向へ変化していくのです。
「四段功」は簡単な動きではありますが、とてもマインドフルネスの効果があるのです。