第四節 気功の呼吸調整中における大脳皮質の状態(1)
 私達は日常生活において、話をしたり歌を歌ったりするが、これらはすべて呼吸運動と深く関わっている。このように人は、意識的に呼吸数や呼吸の深さ、および呼吸形式をコントロールできると言える。こうしたことは、一定限度内で、大脳皮質が皮質下の各呼吸中枢活動を制御し、呼吸運動のコントロールに関与している事を明らかにしている。また、大脳皮質の一部の領域を刺激する事によって、動物および人間の呼吸数や呼吸の間隔および呼吸形式を変えられる事も、実験によって証明されている。
 脳は以下に述べる二つの方法によって呼吸を調節している。一つは、下部脳幹(延髄=えんずい)が行っている呼吸調節中枢と肺瞑想神経をとおして呼吸を調節する方法である。もう一つは、脊髄を通して、呼吸筋の収縮・弛緩(しかん)に直接作用する方法である。
 もちろん、大脳皮質および意識活動により、呼吸を意識えt期に変える事は可能であるが、これは短時間レベルの行為であり、長時間呼吸に影響を及ぼすのは、呼気・吸気や血液中の二酸化炭素と酸素の分圧によるものである。血液の酸素分圧の低下や二酸化炭素分圧の増加、PH(水素濃度)の減少により、化学受容器が刺激されて、呼吸中枢が興奮状態となり、呼吸はそれに伴って盛んになる。このような反応は自動的に行われるものであり、人が自らの意思で行う事は出来ない。そのため、気功によって呼吸を調節するのには、限界があると言えよう。