第四節 気功の呼吸調整中における大脳皮質の状態(2)
 大脳皮質のある部分も、肺や血管、気道と呼吸筋の、各種化学受容器の伝入衝動を受け入れ、呼吸運動の反射性調節に関与している、例えば、第三者により四肢が曲げられる時、体の代謝は目立って変化しないが、筋肉受容器を刺激したことにより、呼吸は明らかに増強されている。このことは、ある気功で、練習者の調身行為(=気功の動作)が呼吸に影響を及ぼす事象でも見受けられる。
 気功によって呼吸の調整を行う時、練習者は呼吸調整に注意を払うので、呼吸に関わる大脳皮質が興奮状態になり、大脳皮質の他の領域が抑制状態に転じるが、これは一念(=一つのことに対する意識の集中)が万念(=雑念)に代わって、大脳皮質の入静(=精神統一状態)にはいる生理基礎を促進するのかもしれない。仮に、気功練習者が吐き出す息に注意を向けたならば、息を吐き出す時に、副交感神経の興奮と交換神経の抑制が伴われ、体は簡単に弛緩状態になってしまう。加えて、息を吐き出す時に常に意識して、心の中で言葉を唱えた場合、身体がリラックスするのを促進かつ強化し、また大脳皮質の入静(=精神統一状態)を促す。大脳皮質の抑制は呼吸をひとしく穏やかなものにするが、逆に大脳皮質のさらなる入静状態を促進する。大脳皮質の広範な抑制によって、皮質下の呼吸中枢が解放され、完全に自動調節状態に入る。有機体の代謝レベルが低い時、血流中の少量代謝産物の調節と影響をわずかに受ける。意識は再び呼吸を意識しなくても解放され、気功練習者はリラックスした状態に至ることができる