(三)肺通気量の変化
  1分間に肺を出入りする気体総量を、毎分換気量と言う。一回呼吸気量と呼吸数の積算(×)と相等しい。正常な成人が静かに呼吸した場合の呼吸数は、1分当たり約12~18回であり、ゆえに安静時の1分当たり通気量は6~8リットルである。出きるだけ深い呼吸を、できるだけ速やかに行わせたときの毎分換気量を、最大換気量と呼んでいる。中国では通常、15秒間で測定を行い、測定値に4をかけて数値を求める。1分間当たりの最大換気量は、1人の人がどれだけの量の運動量が行えるかということを推定する、重要な生理指標である。
 鼻、咽頭、喉、気管、気管支などの呼吸道は、ガス交換の機能がないので、この部分の空腔を死腔という。気管支が拡張すると死胞も大きくなる。この死胞の大きさに影響するのが、細気管支の筋-弾力組織で、これらと各呼吸筋の収縮と弛緩機能も、鍛錬を通じて強化できる。故に、気功の鍛錬によって肺の通気機能を高めることが出来ると言える。肺胞に入って呼吸性細気管支到達した空気のみが、血液とガス交換を行うことができる。このため、ガス交換という点から考えた場合、本当に有効な通気量は肺胞換気量であるといえる。この数値は、一回呼吸気量から死腔をひいて、1分間の呼吸数をかけて出す。
気功の訓練を行うと一回呼吸気量が増加するが、増加がある一定の程度に達すると呼吸数が著しく減少し、肺の毎分間換気量が少なくなり、その結果呼気の中における二酸化炭素が増加し、酸素が減少する。
気功を行っている間、1分間の呼吸数の減少が毎分換気量の減少を引きおこすが、それに伴って肺胞換気量も減少する。しかし、気功訓練中に一回呼吸気量が増加し、加えて気功は平均して細長い特有の呼吸形式なので、肺胞換気比も大幅に向上させることが可能となる。肺胞換気比の増加は、ガス交換を促進するのに有利な要素になる。そして気功を行っている時に、練習者は呼吸が少なくなるにもかかわらず、酸素不足や無酸素代謝増加の現象が現れない原因にもなるのである。