少林寺の白衣殿にある北山壁には、少林寺武術の中の「六合対打撃譜」が彩色で描かれています。南山壁には「双刀破槍」と「稍子棍破大刀」などの武具を使った練習図になっており、「捶譜堂(すいふどう)」と呼ばれています。
現在、山門から出ている道の西側には、もと「達摩西来堂」の跡地がありますが、新たに「捶譜堂」が建てられています。「捶譜堂」は、廊下でぐるっと囲まれた建築物で、中には全部で14組の等身大の泥人形があります。

一番目は「座禅」ですが、「禅坐」とも「坐静」とも言われています。座禅をする時の姿勢は「結跏趺坐(けっかふざ)」といい、あぐらをくむようにして座ります。このとき、組んだ足の先の一方は、脚の付け根にあたるようにします。手を合掌させ、両目は軽く閉じ、舌は上の歯の付け根にあたるようにします。呼吸を調整し、意識を集中させて、雑念を取り払い、黙って「阿弥陀仏」を唱え、「人定(れんじょう)」の境地に至ります。「人定」とは、心が完全に純粋であり、寝ているような寝ていないような状態であり、ダルマ大師が創立なさった禅宗が持つ、最も顕著な特徴です。

現在の少林寺の僧侶は大部分の者が、朝夕の勤行(ごんぎょう/=読経による修行)の時、鐘などの仏教楽器による伴奏と共に「南ナンー無ウー楞ランー厳イエン」といった梵語(=サンスクリット語)による仏典を、「結跏趺坐」した状態で、僧侶が一斉に暗唱して読み上げます。その他の時間は、各々が自分で座禅して瞑想します。

二番目は「繞仏(じょうぶつ)」で、「ホウ経(ほうきょう)」ともいいます。これは、座禅の時間が長くなると、身体を動かす必要が出てくるということです。
その昔、ダルマ大師は長い間瞑想のために座っていたので、体を動かす必要が出てきました。一般の僧侶も、朝晩の勤行の間に立ち上がって体を動かさなければいけません。お釈迦さまの周りを一周するのですが、通常三周します。人が少ない時は仏壇の周りですが、多い時には仏殿のまわりをまわります。この「繞仏」を行う時には、歩きながら「南無阿弥陀仏」を唱えます。

三番目は「八段錦(はちだんきん)」です。この動きは、筋を伸ばし、骨を抜くような大きな動きが要求されます。筋や骨の鍛錬となるような、厳しいものですが、以下に述べる八つの動作が行われます。
双手托天理三焦、(両手は上にあげて天をつき、三焦〔さんしょう=胃の噴門までを上焦、幽門までを中焦、ヘソの下までを下焦といい、消化・吸収・輸送・排泄をつかさどる〕を処理する)
左右開弓似射雕。(左右に手を開いて、ワシを弓で射るようなポーズをする)
調理脾胃単挙手、(脾臓や胃の働きを調節するには、片手を挙げる)
五労七傷向後拔。(身体が虚弱で多病な時には、身体をひねって背後を見るようにする)
揺頭擺尾去心火、(身体全身を横にひねれば、体内の熱を静めることができる)
両手攀足固腎腰。(両手で足をつかめば、腎臓と腰が強化できる)
サン拳怒目増気力。(拳を作ってにぎりしめ、目を怒ったように見開けば、気力が増し、)背後起顛百病消。(後ろに沿ってひっくりかえると、あらゆる病気が治る)

四番目は「小洪拳(しょうこうけん)」少林寺武術の技はすべて、相手の急所を攻撃するものであり、大敗させて、死地に追い込むことを目的としています。これは武術を行う上で必要であるだけでなく、身体を鍛錬する上での必要からも出ています。
「小洪拳」は少林寺武術の中では初級に位置する武術で、比較的簡単なもので、「懐中抱月、白雲盖頂」など100余りの連続した動作からなっています。しかし、練習を積んで自分のものにすれば、実践になかなか役立つものです