少林寺はどういう組織管理がなされているのでしょうか?少林寺の僧侶は全国から集まっています。たとえば今の管長は、少林寺がある河南省(かなんしょう)の人ではなくて、他の地方の人です。中国全土から来ているので、様々な姓名の人がいます。様々な人々が集まる少林寺では、どのような組織や管理がなされているのでしょうか。今回は、それを見ていきたいと思います。
 少林寺には管理委員会があり、政府から派遣された人もその委員会に参加しています。これ以外に、元々少林寺の中には厳しい管理組織や制度もあります。少林寺の僧侶は、二つの階層がありますが、一つは「執事(しつじ)僧」で、もう一つは「務下(むか)僧」と言っています。「執事僧」はいわゆる管理職で、自分の個室を持っています。そして「務下僧」は執事僧の指示のもとで実務を行い、大部屋に集団で住んでいます。一部の「務下僧」は、自分の師の部屋に住んで、師の身の回りの世話をする者もいます。平日は農作業や、水汲み、掃除などの雑役(ざつえき)をしますが、これらは皆「務下僧」の仕事なのです。
 「執事僧」は、また三つに分かれています。一番上のレベルは「監院住持僧(かんいんじゅうじそう)」で、「方丈(ほうじょう)」とも言います。これは、日本語では「管長」ですが、中国では通常「方丈大和尚(ほうじょうだいおしょう)」と言われているものです。少林寺で一番位(くらい)が高い、いわゆるリーダーであり、代々、一代に一人しかいません。この「方丈大和尚」は昔から皆、皇帝によって任命されていました。
 二番目のレベルは「四大班首(よんだいはんしゅ)」と言って、四つの役職があります。一つ目は「首座僧(しゅざそう)」と言って「方丈大和尚」の助手をしますが、日本語で言う所の副管長です。首座僧の通常の仕事は、寺全体の僧侶と外部からきた僧侶の講座や説法(せっぽう)のためにする仕事であり、仮に「方丈大和尚」が亡くなられた場合は「首座僧」が次の「方丈大和尚」つまり管長になります。二つ目は「西堂僧(せいどうそう)」で、主な任務はお堂の管理であり、受戒(=一般仏教の戒律を受けて僧侶になること)の儀式を行ったり、副管長である「首座僧」に代わってお経に関する授業や説法を行います。管長や副管長がお寺にいらっしゃらない時には、少林寺全体の事務を取りしきります。いわば、寺の中で三番目に偉い人です。三つ目は「後堂僧(こうどうそう)で、少林寺全体の規則や制度を管理しており、会議の開催責任者でもあります。少林寺全体の僧侶が戒律・規則を守っているかどうかを検査をし、賞罰を実行していますが、その他に弟子の受け入れの是非や、除名に関する権限も持っています。四つ目は「堂主僧(どうしゅそう)」で、図書館の館長のようなもので、経典の管理を任されています。少林寺の蔵書の中には、五経などの経典はもちろんのこと、武術にかんする資料もあり、図書類の収蔵や追加購入、一般開放、閲覧、貸しだし等の責任者なのです。四大班主は、このように、それぞれが大事な役割を持っています。
 第三レベルの執事僧は、八大執事と言われるものです。一番目は「知客僧(ちきゃくそう)」といいますが、管長への会見、他の寺から来た客である僧侶や在家の弟子への接待、寺同士の付き合い、一般社会との間に起こった一切の事務に関する処理など、交渉ごとを管理する責任者です。二番目は「当家僧(とうかそう)」で、寺全体の財務責任者で、金銭の管理をしており、これには僧侶達の生活用品を始めとして生産用品・食費・住居費・医薬費・お茶代が全て含まれています。三番目は「庫師僧(こしそう)」で、寺全体の仏具や、穀類や野菜などの食糧の保存と倉庫の管理をしています。また、「当家僧」と協力して、寺の財務管理に当たっています。四番目は「寮院僧(りょういんそう)」で、寺全体の上下関係に関する礼儀の責任者で、祝日の行事のプログラムの手配をしたり、「知客僧」と協力して来客の接待・食事・宿泊の手配もします。五番目は「僧値僧(そうちそう)」で、「後堂和尚」と協力して、寺全体の戒律が守られているかどうかを検査し、賞罰に関する権利を持っています。いわば、警察官のようなものです。六番目は「維那僧(いなそう)」で、寺全体の参禅(さんぜん)や面壁(めんへき=壁に向かって瞑想)の責任者で、朝晩の勤行(ごんぎょう=お経を読んで、おつとめを行う事)を指導しています。七番目は「点座僧(てんざそう)」で、寺全体の食事と住居の手配を管理し、正月など祭日の食事や生活の改善・招待客の手配などを行う役職です。八番目は「監督僧(かんとくそう)」で、「当家僧」と協力して、日常の事務を処理しています。今までに述べた一番目から七番目の役職の僧達の目が行き届かないところは、この「監督僧」が全て行います。四大班首および八大執事が管理しきれない事柄が出てきた場合、寺の全ての執事僧は当家僧に申し出て、人手が足りなければ当家僧を通して「務下僧」を集めてもらって行うこともあります。
 この他にも色々あります。そのなかで最高師範は、大学の教授のようなものです。大学で言えば、事務部長や人事部長、総務部長のような役職が執事僧であり、最高師範は教授に相当するものです。最高師範は少林寺の武術と禅の修業の学問のにおける一番上の役職です。さっき話した僧侶の日常生活を管理するものとは、ちょっと違います。